海外求人に応募してから採用されるまで

海外で働く為には、日本で採用されて駐在員として派遣される場合と、現地で日系企業又は現地の企業に採用される場合とあります。(私は現地採用で働いていますが、その経緯や、駐在員と現地採用の違いについては別の記事でご紹介していますので、そちらをご参照下さい。)

今回は、採用されるまでのプロセスにおける実体験をご紹介します。

日系企業の現地採用の場合は、国によっても事情が違うと思いますが、企業が募集をかけても日本国内のように応募者が沢山集まることはないでしょうし、募集する媒体も限られています。

従って求人は、日本で現地採用を前提に募集するか、どこの国にもある現地の日本企業の会や大使館、日本企業が加盟する商工会議所、日本人学生がいる大学などで紹介してもらうという場合が多いようです。

そして日本での採用と違って複数の候補が集まることもあまりないので、企業側としては、紹介された人材と会ってみて特に不満がなければ取り敢えず採用してみる、ということが多いようです。

私の場合は、日本人を募集している日本企業があるかどうかわからなかったので、自分から複数の日本企業に履歴書を送ってみましたが、引っかかってきたのは4社だけでした。最終的に採用が決まったIT・通信系の会社の他、広告会社1社と面接しましたが、既にスペインの居住ビザか労働ビザを持っている人材を探していた為不可。

その他、製造業1社との面接では、大量に派遣される日本人技術者のために、社員食堂のおばさんに日本食の作り方を教えてくれる人材を探していると言われ、日本食を作る自信がなかったので、こちらから断りを入れました。

またどこかの日本企業が紹介してくれたらしく、某有名ホテルのスペイン人の支配人とも面接しました。日本人客の接待係りを探していたようですが、接待業は苦手なのでこれも断りをいれました。

また、アパートをシェアしていたコロンビア人の友人から、「あなたが不在の時に日本の会社から電話がかかってきたから、あなたの宣伝沢山しといたわよ」と言われたので、もう1社も連絡をくれたようなのですが、「ありがとう!なんていう会社だった?」と聞くに、「ごめん、覚えてない」とのこと。履歴書を送ったのは100社近かったと記憶しますが、連絡があったのは結局合計5社でした。

アメリカ、イギリス、オーストラリアなど英語圏で、現地で仕事を探している日本人が沢山いるような国ではまた事情も違うと思いますが、英語ではない現地語で仕事が出来る日本人を探している会社であれば、採用基準はそれ程厳しくないのではと思います。

その代わり難しいのが、面接にこぎつけること、つまり募集している会社に巡り合えることでしょう。日本企業が多い国でも、そうしょっちゅう募集されているわけではありません。

募集が見つかっても、希望する業種の会社ではない場合が殆どでしょう。そうであれば、採用する側が特に不満がなければ取り敢えず採用してみるのと同じく、取り敢えず働いてみて転職する機会をうかがうという方法もあります。

私は海外で転職をしているのですが、それはちょっと不思議な縁から始まりました。

スペインでの就職先はプロジェクト要員だったため期間限定で支店の研究所の方で雇用されましたが、その期間が終了した後、本社の人事部で継続して働かないかというオファーを受けました。

今考えると勿体無かったかもしれませんが、当時は人事の仕事はあまり興味がなかったため、それをお断りして一旦日本に帰国し、スペインに留学する前まで勤めていた(休職扱いにしてもらっていた)会社に挨拶に行きました。

1年で帰ると言っておきながら結局スペインで他社に5年も就職していたので、怒ってるかなぁと思いながらも、一応ご挨拶という形で訪問したら、やけに歓迎ムード。大阪の中小企業なのですが、社長と専務自ら出向かえてくれて、しかもお昼を食べに高級レストランに誘ってくれました。

そこで聞かされたのは、南米の支店で雇っていた現地採用の日系二世の人のパフォーマンスが悪くなったので、日本から社員を派遣することにしたが、1年で帰るはずだった私が帰ってこなかったので別の日本人男性を中途採用して現地に派遣した。しかし採用したばかりで派遣したのでどうも心配。

もう一人誰か、海外生活の経験もあって、スペイン語も出来る信頼できる日本人を送れたらどんなに良いかと思っていたところでねぇ、とのこと。そんな時にノコノコ挨拶に現れた私は、まさにネギをしょった鴨なのでした。

そして取り敢えず1年でいいから行ってくれないかと頼まれ、今度は駐在員の扱いで現地に行くことにしました。本当はまたスペインに戻って働きたいと思っていたのですが、また1年別の国で経験を積むのもいいかもしれないと思ったのです。

日本ではこの会社で海外営業をメールでやっていたのですが、今度は現地で、現地の客先を訪問しての営業を任されました。単に交渉して売るだけでなく、売った後の集金も担当です。この会社が取り扱っていた商材はもともと日本製だったのですが、当時日本製は価格の面で売れなくなっていたので中国製を扱い始めた頃でした。

しかし中国製にした途端に品質のクレームも出始め、集金とクレーム処理に追われていたある日、会社に現地にいる日本人から電話がかかってきました。

「xxです」。

苗字を言われて誰だかわからなかったのですが、「スペインの大学で一緒でしたよね」と言われ、それでもよく思い出せずにしばらく考えてから、「あれ、あの人かな」と思い当たる男性が思い浮かびました。私と同じ留学生向けのコースをとっていましたが、やはり私と同じようにあまり授業には出ておらず、いつも現地のスペイン人の女子達に囲まれていた人です。

なんで南米のこんなところに?と思いましたが、聞くと、スペインで知り合った南米の国の女性と親しくなって、留学生向けコースが終わってから彼女の国に一緒に来て結婚し、日本企業で現地採用として働いていたのでした。ただその国には馴染めずに奥さんを連れて日本に帰ろうとしており、自分の後任を探していたところ、日本人会の名簿で私の名前を見つけたとのこと。

彼が勤めていた日本企業はその時私が勤めていた会社よりもずっと規模が大きく、中国製など扱っていないところでしたので、現地法人の日本人社長と面接してみませんか?と言われてすぐに承諾しました。

面接はカジュアルに、地元のイタリア料理のレストランで夕食をご馳走になりながらだったのですが、そこで聞かれたのは、スペインでの仕事の他に私にとっては2ヵ国目となるその国で何をしているのか、でした。

そして、「客先との商談や交渉と、集金、クレーム処理をしています」と言ったところ、それはいい、ということですぐに採用が決まりました。その社長さんは、ご自身が大学でスペイン語を専攻していたので言葉は問題なく、通訳的な業務よりも営業戦力となって日本語も出来る人材を探していたようです。

そして、スペインで知り合って日本に帰る男性がやっていたのとは違う、日本向けの輸出の仕事を担当として与えてくれました。

当時は「世界って狭いんだな」と思っていたのですが、今振り返るとその後も色々な「縁」で仕事がどんどん広がっていったような気がします。そして「縁」というのは、自分で気がつかないうちに縁となる網を、自分で編んでいるのではないかと思っています。

縁は意図的には編めませんが、海外で知り合う日本人との縁は、どんな形であれ大切にしておくと、いつか思いもよらないところでつながっていくような気がします。採用してもらうための面接のコツといったものはあまりなく、面接にこぎつけて他に応募者がいなければほぼ採用となるかと思いますが、面接にこぎつけることも、縁の一つだと思います。

私はスペインで、せっかく採用してくれそうだった会社を断ってしまったこともありますが、その時点で「ちょっと。。。」と思う会社であっても、取り敢えず最初の1歩として働いてみると、そこから色々な縁も生まれていくかもしれません。

この記事を書いた人

T様

海外在住暦20年のビジネスウーマン。夢だった海外生活のため日本の勤務先を休職し、スペインに単身留学。卒業後、現地の日系グローバル企業に就職し、その後南米に転職。合計4ヶ国での勤務を経て、現在は営業管理職を務める。

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