外資系・グローバル企業インタビュー Vol.02 星野リゾート グループ

1. 成り立ちについて教えてください。

2016年、星野リゾートは、長野県軽井沢で最初の旅館を開業してから102年目を迎えました。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換しました。
2001〜04年にかけて、山梨県のリゾナーレ、福島県のアルツ磐梯、 北海道のトマムとリゾートの再建に取り組む一方、星野温泉旅館を改築し、 2005年「星のや軽井沢」を開業致しました。
現在は、ラグジュアリーブランドとして展開している「星のや」、伝統的な温泉旅館を現代にアレンジしながら魅力を発信する小規模高級温泉旅館ブランドの「界」、自然を体感できるような豊富なアクティビティや快適なホテル滞在を追求する西洋型リゾートの「リゾナーレ」の3ブランドを中心に、国内外35箇所を運営しております。

2. 星野リゾートの特徴、について教えてください。

私は軽井沢にある温泉旅館の4代目として生まれ育ちました。正直父がやっていた旅館はかっこ悪いと思っていました。酔っ払いがたくさんいるし、部屋はハワイのホテルの方がかっこいいし。アメリカに行く段階では、稼業を継いだら早く潰そうと思っていた。ところが向こうで大学に2年間行き、日系ホテルで3年間働いた結果、やはり西洋のホテルを日本で作っても、結局は真似事に見えると思いました。もう一度日本のホテル会社が世界を目指していく時に、真似事ではないと思われる形で行かないと勝てない。
コーネル大学にいる間によくありましたが、例えば日本人がフォーマルな式典にスーツを着ることさえ、同級生は「日本は1000年の文化があるのになぜイギリス人の制服を着ているのか」と指摘する。それは日本に対する期待。つまり、日本の会社が運営するホテルというだけで彼らが期待することがある。“日本のおもてなし”というすごい世界があるのではないかと。だから日本に帰って、すごくかっこ悪いものをすごくかっこよくする以外に先はないと思いました。そして「星のや」(旅館)になりました。軽井沢は西洋のホテルの街ですが、どうしても日本的でないと先がないと。
それで「星のや」のようなかたちになったという経緯があります。星野リゾートの施設運営においては、西洋のサービスとは異なる“日本のおもてなし”をそれぞれの施設運営に落とし込むということを大事にしています。例えば西洋ホテルにおける客室清掃とは、元通りきれいにするということですが、日本旅館においては、さらに季節を感じる空間に設えるということになります。そういう日本旅館の哲学は、日本人はもちろん、海外からの旅行者にも高く評価されており、世界のホテルサービスの概念の変革につながると考えています。

3. 2016年7月に東京に新たに日本旅館をオープンされることになった経緯について教えていただけますでしょうか?

「東京で、高級ホテルのスタイルのひとつとして、日本旅館を提供したい」というのがそもそもの発想でした。日本の中心である東京に、日本のおもてなしを体験してもらう日本旅館が存在しないことを、ずっと不思議に思っていました。
東京には様々な高級ホテルが勢ぞろいしていますが、そのカテゴリーのひとつとして旅館を入れることは、日本のホテル業界としても非常に重要なことだと感じます。
このような思いをいろいろと発信する中で、賛同いただけるデベロッパーさんと出会いともにプロジェクトを行うに至りました。日本旅館は私たちにとって、大都市のリゾート運営の第一歩になります。

4.「星のや東京」はどういったお客様をターゲットとされていますか?

インバウンドゲストと国内ゲストの比率やターゲットの設定は特に考えていません。どの施設も共通していますが、運営においてはその土地の価値や文化が発信できているかが重要だと思っています。国内ゲストについてはその土地の魅力の触れることで日本再発見となるような体験ができるか。海外からのゲストには日本の首都と地方の表情の違いや、日本の歴史の深みを感じとってくれるか。今回で言えば東京に日本旅館をつくることで、快適さや機能的でありながら江戸の文化体験ができるような滞在を国内外の皆さんに提供したいと思っています。

5. 訪日外国人のお客様も多くいらっしゃると思いますが、スタッフの方が英語/外国語を使う頻度や状況について教えてください。

お客様との関わりの中ではあらゆる場面で外国語が必要になります。
外国からのお客様のなかには、もちろん日本に来たからには日本語に触れたいという方もいらっしゃるとは思いますが、母国語で会話したい方も多くいらっしゃる。
すでに、英語、中国語、韓国語、フランス語が話せるスタッフがいるのですが、外国語を話せるスタッフが各施設にいることによって、各国のお客様に合わせて柔軟に対応し、快適に過ごしていただきたいと思います。

6. スタッフの方に期待することを教えてください。

滞在全体を演出することが私たちの仕事です。地域文化や伝統など、そこに住む人が自分たちのプライドを感じられる魅力をサービスに落とし込み、ゲストに提供する。
西洋ホテルとは全く異なる宿泊施設の運営方法は、サービスの質と生産性を両立させるという意味で、これからの時代に必要とされると思います。スタッフにはこの理念をもとに仕事を楽しんでほしいと思います。

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