外資系・グローバル企業インタビュー Vol.09 ウィプロジャパン株式会社

<会社説明>1998年に日本事業を開始した、インド3大IT企業の一つ。ITコンサルティング、システム・インテグレーション、アウトソーシングなど様々なソリューションサービスを展開。本社はインドのシリコンバレーと言われるベンガル。5億ドルでクラウド会社Appirioを買収しソフトウェア業界で話題となった。

①これまでのキャリアパスを教えてください。

大学を卒業後は、NECに入社し、最初の4年間はメインフレームのシステムエンジニアをしていました。その後、業界におけるオープンシステム化とダウンサイジング(安価で小型のコンピュータの組み合わせによりシステムを再構築すること)の流れを受け、SEをしながら、安価で開発期間の短いシステムをオープン技術で開発するという仕事を、実証セールス含め3年間行いました。また旅行業のエージェント支援システムや店舗システムの構築、グループウェアの導入、企業のWebサイト立上げ、Webアプリの開発等も手掛けました。

私は小学校から中学校まで海外で過ごした経験があったので、その後海外駐在の話を頂き、1998年に北米に移りました。最初の2年間はサンノゼを拠点に主に日系企業のプロジェクト支援を行いました。その後11年間はダラスでNECのベンチャー企業立ち上げに参画することになり、スタートアップメンバーとしてゼロから組織をつくり、プロダクト開発部門、そしてサポート部門の統括をし、最終的に営業も含めた全体の責任者となりました。この北米での事業は私がいた計13年間の間に、カナダ、メキシコにまでビジネス広げ、北米、メキシコにおける小売業界トップ企業の店舗システムを全面的にサポートする規模にまで成長しました。

その後日本に帰ってきて、北米での経験を生かし、欧州、APAC地域も入れたグローバル小売業向けソリューションビジネスの責任者になったのですが、欧州、東南アジアや中国などグローバル全体をみることになったのは素晴らしい経験でした。

②Wiproとの出会いは?

アメリカではモノづくりをするときに、たいていインドをオフショアとして使うので、Wiproとは当時から付き合いがありました。また前職時代は日本から見てアメリカで仕事をしていたので、現職の立場はドメスティックでは大きい会社だけれども相手国から見るとそれほどではない、という環境が似ているなと思ったんです。Wiproは世界的に名の知れた企業ですが、日本ではまだそこまで知られていないので、そこのプレゼンスをどうやって広げていけばいいのか、というのをやりたかったんですよね。それが入社した理由です。

③現在の仕事内容を教えてください。

いまはインドが得意としている、IoT、デジタル、AIの3つをうまく日本にアピールしていくことに注力しており、特に自動車業界への営業を強化しています。とにかくインドにおけるITのイメージを変えたいと思っているんですよ。いままでは安い人件費でモノをつくりましょう、というモデルだったのですが、既にインドの人件費が上がってきているのもあって、先ほど申し上げた3つの要素でうまく自動化を推奨しながら、ヒト依存ではないサービスを進めていきます。サービス範囲としても、いままではお客様の要望を聞いて、それをそのまま提供していたところを、今後はend to endで、要件を聞く前にこちらから提案するような”disruptive design”(固定観念を破壊するようなイノベイティブな手法)に変えていきます。2016年に、WiproはDesignitという会社を買収したので、その戦略的デザインの力も使えればと思います。

④高谷様はセミナーも活発に行われていらっしゃいましたね?

2016年はAIをテーマにガートナーのイベントで登壇しました。また”design thinking”や”disruptive design”をするために必要なアプローチ方法についてもお話ししましたね。それもすべて、先ほどお話ししたインドITのイメージを変えるためです。

今まではアプリケーション開発やERP(Enterprise Resource Planning。企業におけるヒト・モノ・カネの動きを管理し、コンピュータを利用して情報を統合化した経営を支援するためのシステムのこと。)についてのセミナーがほとんどでしたが、それだとこれまでのイメージと変わらないので。

⑤日本市場ではどのようなクライアントに、どのようなプロジェクトで携わっていますか?

日本市場ではハイテク製造業向けのプロダクトエンジニアリングサービスが主体となっています。Wipro Japanの歴史の中でも一番長いサービスです。半導体の設計や自動車会社のマイナーモデルチェンジの設計になりますが、そのほかにもプロダクトを海外に展開される企業に、バリューエンジニアリングといって部品表の見直しをかけて、コスト削減をするような製品価値の最大化をしています。バイネームでお伝えすると、全世界に展開している武田薬品工業株式会社様のグローバルインフラのサポートも行っています。

⑥インドカルチャーについてお聞きしたいのですが、仕事の仕方などで驚いたことはありましたか?

私はアメリカ生活が長かったので、アメリカの企業のやり方はよくわかっているつもりなのですが、インドの経営の仕方はアメリカと日本の中間みたいな感じですね。日本はコンセンサスドリブンで大多数の同意を得て決定事項を増やしていく一方、アメリカはトップダウンで責任者が決まっているので簡単に物事が進んでいきます。インドはコンセンサスドリブンなのに責任者が明確になっていないことが多く、結局誰が何をすればいいのかと困ったことはありました。ただ面白いことに、いったん決まったことに対し変更がかかることもよくあり、よりフレキシブルかもしれません。また意思決定をした人に対して、責任が問われるという日本企業的なこともないですね。プランを決めて進めるということに、アメリカほど厳しくもないです。

インドの言葉で「ジュガード」という言葉があるのですが、とにかくやっつけ仕事で何もかもやってしまうような方式をいいます。非常にクリエイティブで、やり遂げる力があるというのが大きな特徴です。日本の場合、順序立てて何か実行した後に、反省して次に生かそうとしますが、そういう方式ではなく、どんどん次に進んで新しいものをつくっていくという発想は面白いですね。

⑦クラウド大手アピリオを520億円で買収するなど、更に規模が大きくなっていると思いますが、グループとしての変化は感じられますか?

もちろん感じられます。アピリオは日本でもプレゼンスがある会社で、セールスドットコムの戦略的パートナーでもありますし、私たちのイメージを変える力のある企業だと思っています。またアピリオの傘下にトップコーダー社というのがありますが、これはコンペティション方式でコーダーに成果物を募り、トップランキングされたコーダに賞金を出すという方式で開発を進めるクラウドソーシングです。NASAやスタンフォード大のプロジェクトも手掛けているのですが、日本市場でも1万人以上参加者がいるので、これから更に活発になると思いますよ。

⑧直近の目標を教えてください。

せっかく買収したので、Designit社、アピリオ社、トップコーダー社の3社をしっかりインテグレーションし、end to endでカバーしていくことが目標ですね。そして自動車業界からの理解を深めたいと思っています。

採用面では、Wiproカルチャーを一緒に作っていける人を探していて、外資系企業だけでなく日系企業にも埋もれている逸材の方がいらっしゃると思うので、どうにか引き出すことがでれば。日本人の優秀な方を採用することで、日本企業と外国企業の橋渡しにもなるし、めぐりめぐって日本企業の活性化になるのではと思っています。

⑨具体的にWiproカルチャーとは?逆にそのカルチャーに合わない方とはどういった方でしょうか?

【Wipro Japanの方々】

Wiproカルチャーは先ほどの「ジュガード」に近いところがあって、フレキシブルでクリエイティブだということです。あと非常にハンズオンですね。上に立てば立つほど仕事しなくなる、というのではなく、逆に役職が上がればより働くことが求められる文化があります。自分で工夫して、リードして、イニシアティブを握っていく、というマインドセットがないと絶対生き残れないです。なのでお膳立てしてもらうことに慣れている人には合わないかな。あとは流動的に物事が変わるので、社内のコミュニケーションツールで情報をチェックしたりとか、キャッチアップに長けていることも必要です。アジャイルな発想で仕事を回していける人なら活躍できると思いますよ。

⑩英語力は必須ですか?

そうですね。ただ英語を話せても、うまく物事を進めていくコミュニケーション力がなければいけませんので、得意でなくても物怖じせずに、ホワイトボードを使ってでも伝えようとするような人が求められます。

⑪入社した場合、どのようなキャリア形成が期待できますか?

【Wipro Japanの方々】

日本ではまだ規模が比較的小さいので、これからいろいろなことを作り上げていけると思ってください。事業を立ち上げるリーダーシップがあれば当然実現可能ですし、それにあったキャリアパスも望めます。プロダクトエンジニアリングやグローバルインフラが主体ではあるものの、Wipro本社はそれ以外のサービスも幅広く展開していますので、やりたいことをいくらでも引っ張ってこれます。また事業を伸ばすことができれば、副社長やCountry Head、またグローバル全体のポジションにもつけるでしょう。また私たちはWipro Limitedという一つのグループなので、プロジェクトをするときは、各国からプロジェクトメンバーを集めますし、海外転勤も普通にあります。

⑫最後に求職者の方にメッセージをお願いいたします。

インドのパワーを是非一緒に感じ取ってほしいです。インドに関する情報は日本ではまだ少ないと思いますが、海外のニュースを見てみるとどれだけ世界的影響度があるかわかります。Wiproを通じて、インドと日本はもとより、グローバルと日本の橋渡しができますし、日本の景気も回復することができると思っています。そういったことに興味のあるかたと是非ご一緒したいですね。

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