外資系・グローバル企業インタビュー Vol.15 トライオン株式会社

<略歴>三菱地所を経て、ソフトバンクに入社。孫社長の元で社長室長や管理本部長を歴任。厚生労働省大臣政策室政策官、日本年金機構理事。著書:「海外経験ゼロでも仕事が忙しくても英語は1年でマスターできる」、「世界のトップを10秒で納得させる資料の法則」、「なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか――孫正義のYesと言わせる技術」 他

1)トライズの事業をスタートした際、日本人の英語学習法やこのビジネスモデルの勝算について、どのようにお考えでしたか?

このビジネスを始めることになったきっかけは、1998年にソフトバンクに転職したときに、孫社長に同行したシリコンバレーで、Yahoo!の幹部相手に英語がほとんど話せなかった、という経験です。大恥をかき、このままではクビになってしまうという危機感を覚えました。
英語は大学受験対策を含め勉強していて、海外旅行で困ることもなく、TOEICスコアもある程度保持していたのですが、実際に会議に出たときに、相手が何を言っているのか分からなかったのです。そこから仲間とEラーニングを始めたのですが、国内の学習教材だけでなく、海外から輸入したコンテンツも使っていたのに、誰も上手くなっている実感がありませんでした。当時メジャーだった学習法は、英会話学校、CD付きの本、ラジオでしたが、もう何年、何十年も進化していないと感じましたし、コンテンツとしては音声や動画などたくさんあるのに、なかなかうまく活用できずに、実際に話せるようになる人が少ないことに問題意識を持ちました。

Foreign Service Institute(アメリカ国務省付属の外国語研修機関)によると、日本人が英語を習得するのには約2,200時間かかるそうです。日本人は学校教育で約1,200時間の英語授業を受けていますので、あと1,000時間は学習しなければなりません。しかし忙しいビジネスパーソンは、何らかのゴールがないと途中で断念してしまいますので、根本的に1,000時間勉強するという環境づくりをすることが本質だと思いました。そこでソフトバンク流の、「ゴールから逆算してプランする」という効率的な方法を導入し、数値管理とPDCAサイクルを回せば、この事業で成功できると思ったのです。私や当時一緒に勉強していた仲間は、この方法で約1~1年半で英語を話せるようになりました。また、拙著の『海外経験ゼロでも仕事が忙しくても英語は1年でマスターできる』の反響がよかったことも、この学習法にニーズがあるという確信になりました。

2)スタートからわずか4年で、拠点数と売上・規模ともに急成長されていますが、成功の鍵は何だったと思われますか?

センターはこの4年で14まで拡大しました。受講生増加の要因の一つは、雑誌やインターネットの記事など様々なメディアに取り上げていただけることが多く、それらを通じて私たちの学習の考え方を知ってから来てくださる方が多いという点はあると思っています。今は何でもインターネットで検索して情報収集できますので、生徒さんの体験談や実績をサイトで見て信頼し、最終的にお客さんになって頂けています。プライベート型の英会話教室としては、マインドシェアで多くの割合を占めていると思います。

3)今後5年後・10年後は、どのような規模・マーケットポジションを目指していかれるのでしょうか?

5年後にはビジネスパーソン向けの英語学習マーケットで、売上シェアNo.1を目指しています。なんとなく英語をネイティブと話すだけのゴールのないサービスを売るのではなく、今後もその人のゴールに合わせたオーダーメイドのプログラムで確実に効果を出していきます。10年後はまだわからないですが、英語以外の多言語化や、ITを取り入れた事業展開も視野に入れています。

4)株式上場を目指しているそうですが、上場することで得られる最大のメリットは何だとお考えですか?

まずは急速に成長するための資金拡大です。そして社会的な信頼を得られることだと思います。益々良い人材に集まってもらいたいと思っていますし、今働いている社員も周りの人に会社のことを話すときに自信をもてると思います。できるだけ早く東証一部市場に上場したいと思っています。

5)受講生の学習を支援する「イングリッシュ・コンサルタント」を更に募集するそうですが、必要な適性やスキルを3つ教えてください。

毎月新メンバーが入社しており、定着率もよく、内定辞退率もほぼゼロですので順調だと思います。今後の新設オープンに向けて、更に新メンバーを募集しています。基本的な適性としては、ビジネスレベルの英語のスピーキング・リスニング力です。より良いサービスを提供するために、受講生の声を取り入れて、ネイティブ講師にフィードバックしていくのが主たる業務となるためです。二つ目の適性は、自ら日本教育の延長上で、英語を勉強し習得した経験があるかということです。日本の英語教育と、実際に話せるようになるレベルにはギャップがあるので、そこをどう乗り越えてきたかを、受講生と同じ目線に立って共感できることが必要です。

三つ目は、他人をリスペクトできることです。コーポレートバリューの中に”Respect and learn from each other”という一文があるのですが、社員にも受講生にも、尊敬の意を表してほしいと思っているので、自分や自分の受講生だけ良ければいいというのではなく、例え直接担当している受講生でなくても、みんなで声掛けし合うようにしています。これは、リスペクトし合うコミュニティの中で、お互いに学び合えるような組織にしたいからです。受講生も自分だけで勉強していると感じるよりも、仲間がたくさんいる中で応援してもらっていると感じられれば、頑張れることもありますから。私たちのセンターにきたら仲間がいると思ってほしいですし、情報交換して勉強法も磨いてほしいです。受講生の中には、勉強用のアプリを自分で開発した方が、レッスンの仲間にそのアプリをシェアしたということもありました。このようにトライズは、お互いを高め合うコミュニティですので、より良い環境づくりをしてくださる方が適していると思います。

6)今後、ますます女性社員が活躍しやすい環境を整えるべく、キッズスペースを併設したオフィスの新設や、「育休復帰後採用確約システム」等のアイディアがあると伺いましたが、これらの背景にはどのような想いがありますか?

そうですね、キッズスペースのところでいくと具体的には、女性が自分の子供を連れて出社できるようにしたいと思っています。オフィスとガラスの壁を隔てて、お子さんが滑り台で遊んだりお昼寝ができるスペースを設置し、お子さんたちを見るのは、おばあちゃん世代の方にお任せすることを考えています。これは女性の活躍を支援するという目的だけでなく、社会的に高齢化や少子化が進んでいる中で、企業として対応するべき問題だと思い、社内で考えているところです。社会問題も考えながら、利益が出る仕組みをつくるのが、経営者の務めだと感じています。会社としても、活躍する人材に長く働いてもらいたいですから、こういった仕組みづくりは積極的に進めていきたいです。

7)成長しても会社として変えたくないことは何でしょうか?

企業理念やコアとなる考え方は変えたくないと思っています。例えば、弊社の企業バリューのなかに”Be happy!”というのがあるのですが、どんなに会社が大きくなっても社員がハッピーでないことはやりたくないです。社員が残業して初めて儲かるようなビジネスモデルはやらないほうがいいと思っていますから。普通にがんばったら、普通以上に給料がもらえるようなビジネスモデルは拡大しても続けたいです。実は、私自身苦い経験がありまして、コールセンター長をしていた時のことですが、トークタイムを短くする指示を出したときに、対応の途中で無理に電話を切るというオペレーターが増えてしまいました。本来はトークスクリプトの無駄を減らすなどして、効率的にするべきなのですが、負担がすべてオペレーターに寄ってしまったので、そういう失敗はしたくないと思っています。

8)最後に、キャリアクロスに登録している求職者のみなさんへメッセージをお願いいたします。

「イングリッシュ・コンサルタント」というのはおそらく今までにない職種ではないかと思いますが、私たちがこの数年間やってきたなかで、理念などの大切にしていることや、業界内での役割が確立しつつあります。受講生の夢を共有しながら自分も成長できますし、英語が好きな方であれば、こんなに良い仕事はなかなか無いのでは、と思っています。受講生に自分の苦労した経験をフィードバックしながらサポートしていく仕事なので、英語の取得に苦労した方にはぜひ自信をもって応募して頂きたいです。

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